2024年04月01日

友愛数って?

だいぶ前になりますが「博士の愛した数式」小川洋子著という小説の映画が公開されていました。(リンク:Wkipedia)

これは、交通事故で記憶が80分しか持続しなくなってしまった元数学者の話なのですが、ストーリーの中にはいくつも数学に関する概念が紹介されています。
今回は、その中の「友愛数」について紹介したいと思います。

「友愛数」とは…
異なる2つの自然数の組で(それぞれ A Bとする)自分自身を除いた約数の和においてAの約数の合計=B、Bの約数の合計=Aとなるような数の組あわせを言う。 

ちなみに、一番小さな友愛数の組は(220, 284)になります。
さて、この「友愛数」ですが、まだまだ判っていないことが多い数字でもあります。

友愛数の組は無限に存在するか?
偶数と奇数からなる友愛数の組は存在するか?(今まで見つかっている「友愛数」はすべて偶数同士もしくは奇数同士の組み合わせです)

友愛数」を計算から導き出す法則…
「友愛数」を計算から導き出す「サービト・イブン・クッラの法則」という式があります。
この式を使うと、「友愛数」を計算で導き出すことができます。
友愛数1.png
しかし、残念な事にこの式はすべての「友愛数」について適応されるとは限らないのです。
(ですので、公式とは言えないのでしょう…)

n=2の場合で計算すれば、最小の「友愛数」が求められます。(220,284)
友愛数2.jpg
n=3の場合は、条件を満たさず、n=4の場合は、(17296,18416) という「友愛数」が得られます。

しかし(6232, 6368)は「友愛数」で(220,284)と(17296,18416)の間の数ですが、サービド・イブン=クッラの式を満たしません。

「友愛数」自体、現在までにコンピュータを駆使した計算(地道な)で、10億個以上が発見されていますが、いまだに完全な公式は見つかっていません…

自然数一つとっても、奥が深いものを感じますね!
「XX数」と名の付く自然数は他にもたくさんあります。興味があれば調べてみてはいかがでしょうか?



記事投稿:池田

posted by towa at 15:07| まめちしき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年11月20日

超越数

最近TVを見ていたら、面白い番組がありました。
Eテレで放映中の「笑わない数学」がそれです。
その中で、面白いエピソードが紹介されていましたので、紹介したいと思います。

番組で取り上げているのは、数論(数の性質について研究する数学)なのですが、難しい数論の考え方を、判りやすく簡単に紹介しています。

番組は「超越数」についてでした
超越数は、数の分類の一つになります

数の分類には
有理数:整数分の整数という分数で表せる数や、無理数:有理数ではない実数のこと。つまり、整数分の整数では表せない数といった、分類等がありますが、その他には「代数的数」「超越数」といった分類もあります。

代数的数:1次方程式や2次方程式といった何らかの代数方程式の解として表される数、√2や√3は、√a^2=aなので、代表的数、またx^2=-1の解がiとなることから、虚数も代数的数です。(ただし、代数方程式の係数は、すべて有理数)
超越数:代数方程式で表すことのできない数、πやeはこれにあたる。

ネイピア数 が超越数である証明は、シャルル・エルミートにより、1873年に証明されました。証明は、結構難しいので興味のある方は調べてみてください。

また、フェルディナント・フォン・リンデマンにより証明されたリンデマンの定理では、代数的数 aに対してe^aは超越数であることが知られています。

この定理を使うと、πも超越数であることが判ります。(美しいです)


現在までのところ、πやeといった特殊な数を含んだ、超越数として確認された数はそれほど多くありません。
たとえば、π+eが超越数であるかは、確認されていないのです。
しかし、超越数が代数的数より圧倒的に多いことは、判っており、また複素数のほとんどが超越数であることは、確認されています。
(代数的数も超越数も無限に存在するはずなのに、超越数のほうが多いって…禅問答ですね)

私たちの身近な数字には、まだまだ多くの謎が含まれているのですね。


記事投稿:池田

posted by towa at 16:32| まめちしき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年09月27日

地元にあった最先端の研究施設

私の住んでいる東京の西東京市(2001年田無市と保谷市が合併)には「いこいの森公園」という大きな公園があります。

この公園は、2005年に西東京市が誕生したのを記念して作られましたが、以前この場所には「東京大学原子核研究所」という当時、最先端の研究施設がありました。

原子核研究所は、第2次世界大戦後、研究が途絶えていた日本の原子核物理学の拠点として計画され、「サイクロトロン」「電子シンクロトロン」といった最先端の性能を持つ加速器施設が作られました。

シンクロトロン.PNG
東京大学原子核研究所のシンクロトロン(画像:KEK H/Pより)

また、この施設は東大だけの設備ではなく、全国の大学を縦断し研究できる、原子核・素粒子・宇宙線研究の開かれた研究施設として、その後の物理学に大きな成果をもたらした施設でもありました。

代表的な成果としては…
・サイクロトロンやシンクロトロンを用いた、原子核の構造の研究や、核子共鳴の研究
・人工的につくられたパイ中間子の観測
・ベータ線分析器によるニュートリノ質量の直接測定実験 

そのほかにも、研究者の中から、小柴昌俊博士、益川敏英博士、梶田隆章博士等、ノーベル物理学賞を輩出したり、現在の医療で使われるPET診断(陽電子断層撮像)に使うポジトロン核種(陽電子を出す放射性同位元素)の生成の基礎を作るなど、多岐にわたり現在の科学技術の発展に寄与しました。

この研究所は、より大きな加速器の建設や、設備の老朽化等の問題もあり、2000年に施設移転されましたが、それまでは、年に1回ほど一般公開がされていました。
だれでも最先端の施設を見学することができ、私もわからないながら、何度か見学をした覚えがあります。

研究所の意思は現在も、「高エネルギー加速器研究機構(KEK)」「素粒子原子核研究所」に引き継がれ最先端の研究がおこなわれているのです。
(LINK:Wikiペディア)


記事投稿:池田

posted by towa at 15:13| まめちしき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年09月15日

水平線までの距離って何Km?

ここのところ、三角関数の話をしているので、もう一つ三角関数の話です

皆さん「水平線」ご存じですよね?
「どこまでも広がる海の遥かかなたの水平線」といったイメージですが、実際、水平線までの距離ってどのくらいあるのでしょうか?
10Km? 100Km? 実際に計算してみましょう
水平線.PNG
・地球の半径:
・観測者の地表からの目線の高さ:
・水平線までの距離:
とすると 線分r、r+h、lで囲まれた直角三角形ができます。

直角三角形ですので、「三平方の定理」が成り立ちます

三平方の定理により
r^2 + l^2 = (r+h)^2 が成り立ちます

変形すると
l^2 = (r+h)^2-r^2 = √((r+h)^2-r^2)

これに 数値を代入して計算すると…

l≒4517m(4.517Km) となります


あれ? 思ったより近くないですか?


記事投稿:池田

posted by towa at 15:26| まめちしき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年08月31日

偏微分

今まで微分について何度か話をしてきましたが、微分をする関数については、すべて変数が一つ(例えばx)だけの場合でした。
科学の世界で、微分を使う場面は多岐にわたりますが、必ずしも変数が1つだけとは限りません。(複数の変数を扱う場合が圧倒的に多いです…)
今回は、変数が複数ある関数を微分する「偏微分」の計算方法について簡単に話をしたいと思います。

偏微分とは? 多変数関数を「特定の文字以外定数とみなして」微分したもののことです。

例えばf(x,y)= x ^2 +xy を例にすると、xを変数、yを定数として計算しますので、f(x,y)= x ^2 +xyという関数のxについての偏微分は 2x+yとなります。

これを、記号を使って表すと以下のようになります。(変数xの偏微分)

偏微分1.png

今度は、同じ関数を変数yについて偏微分してみます。その際はx^2を定数と考えて

偏微分2.png

さらに、xy両方とも偏微分する際は、xの偏微分の結果をさらにyで偏微分します。

偏微分8.png

xyの計算の順番を変えても同じく

偏微分4.png

となり多くの場合、結果は同じになります。

計算の仕方が判ったところで、実際の計算の例を挙げてみましょう。
皆さんが高校数学を学んだ上で、最初の頃に悩んだであろう「平方完成」の問題…

偏微分5.png

上記の式を「平方完成」させると 

偏微分6.png

となりますが、これを偏微分を使って解くと、もっと簡単に解くことができます。

偏微分7.png

として、連立方程式を解くと、x=8, y=-5 が得られるので、元の式に代入することで、最小値 -35 が得られます。

この例自体は、単なる数遊びで「だから何なんだ!」と思われる向きもありますが、複数の変数を持つ現象に出会って、それを解析する際には、「偏微分」という方法を使うことによって、「変数要素それぞれの解析ができ、それを重ね合わせることで、全体の解析が可能になる」と言うことを知ってもらえれば、良いと思います。


記事投稿:池田

posted by towa at 14:32| まめちしき | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする