前回、ゲルマニウムラジオについて書きましたが、今回からはトランジスタを1個使い、より大きな音で鳴るラジオについて考えてみたいと思います。
まず、トランジスタについてですが、大まかに言うと…
① 電流を増幅できる半導体素子で、電流増幅の他に
電子スイッチとして使うこともできる。
② P型半導体とN型半導体の組み合わせで、PNP型とNPN型がある。(電界効果トランジスタでは、Pチャンネル型とNチャンネル型)
③ 3つの端子(コレクタ:C エミッタ:E ベース:B)からなり、各端子間に電流を流す(バイアスを掛ける)ことにより、ベース電流を増幅する。
といった、特徴があります。
ここでは「2SC1815」という小信号汎用トランジスタを使って、ゲルマニウムラジオより大きな音でイヤホンを鳴らすことを考えます。
*計算や数値・数式は、「思い込みの」の部分もあって、正解ではないかもしれません…あくまでも参考として(逃げ打ってどうする!)
ゲルマニウムラジオでは使わなかった電池をトランジスタを駆動させるために使うのが大きな特徴になります。
回路は、「自己バイアス回路」と呼ばれる回路を最低限の部品で構成しています。
世の中には、トランジスタ1個を使ったラジオの回路はあまた紹介されていますが、今回は「バイアス」について考えるため、回路計算をしてみます。
また「バイアス」の意味は、「トランジスタに電流を流す」と思っていれば、とりあえずは良いと思います。
さて、そのバイアス(トランジスタに流す電流)を決めていきましょう。
回路図の右半分だけを取り出して考えてみます。
トランジスタの内部抵抗を考えなければ、回路に流れる電流Icを決めれば、コレクタ抵抗Rcをオームの法則で簡単に求めることができますね。
2SC1815のIcは、0.1mA~数mA程度で考える場合が多いようですので、まずは Ic=0.1mAとして考えます。
トランジスタで駆動するデバイスの消費電力が大きければ、流す電流も多くする必要がありますが、ここはイヤホンを鳴らすだけですので、電池の消費も考えて、最低の電流値で設定します。
上の回路に流れる電流:Ic=0.1mA 電圧:Vc=1/2・Vcc=0.75V(Vc=コレクタ電流:Bに印加される電圧が変化してもVccの電圧を超えない様に1/2程度にする)とすると、あとはオームの法則です。
Rc=Vc/Ic = 0.75(V)/0.1(mA)=7.5(KΩ) 大体、7.5KΩ程度の抵抗を考えれば良さそうです。
(Icをいくつにするかは、設計者によって幅があり、Rcも数KΩ~数10KΩと様々です。この辺がアナログの難しいところです)
次に、C-B間に掛かっている抵抗Rbを下記で求めます。
Trの立上り電圧は、TrのデータシートのIb-Vbe特性表から判断します。(ここでは0.4Vとしました)
2SC1815の電流増幅率:hfe=200とします。(これはBに印加された電流がどの程度増幅されるかを表すパラメータで単純に200倍と考えてください)
上記から、Rb=750KΩ程度(700KΩって無いので…680KΩでも可)で良さそうです。
ところで、「ゲルマニウムラジオ」で検波に使ったダイオードが見当たりませんよね?
これで、ラジオは聞こえるのでしょうか…
トランジスタ(NPN型の場合)は、B(P型半導体)が、CとE(N型半導体)に挟まれた構造をしています。
B-E間だけを考えると、ダイオードと同じPN構造になっています。
この回路は、B-E間で検波を行い、同時に増幅することができる回路になっています。
(Bの前に「ゲルマニウムラジオ」と同じダイオードを付けても、同様に検波できますが、ダイオードとトランジスタの2か所で検波する必要はありませんよね?)
最後に、Bの前についているコンデンサC1です。
Trにバイアスを掛けたことにより、信号波形には直流成分が含まれてしまい、この直流成分が波形を相対的に小さな振幅にしてしまいます。
そこで、入力に「カップリングコンデンサ」と呼ばれるコンデンサをつけて、直流成分を除く様にしています。
コンデンサの容量は … なかなか難しいところですが、経験上0.1μF~1μF程度のセコンデンサが良いように思います。(えっと、実は良く理解してないです)
容量が小さすぎると音が出ませんし、大きすぎても良くないようです。(違ってたらごめんなさい…)
さて、これで鳴るはずですが、鳴らない・思ったより音が小さいと思ったら、RcとC1の値を変えて実験してみてください。
なかなか設計通りにならないのが「アナログ」です。(自分が無知なだけですね!すいません…)
次回は、実際に組み立てしてみましょう
記事投稿:池田